女装する女たち

2009/09/18 18:06

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「死ぬまで女でいたいのです」というパルコの広告に出会ったのは、まだ私が30歳になるかならない頃だった。

着物姿の清楚な女性の横顔は異様に女らしく、「こんなに女らしい人がなにをいっているのだろう」とその時は制作者の意図がよくわからなかった。しかし、歳をかさね、社会に出て仕事を続けているうちに「女でありつづけること」がどんなに難しく、大変なことかがよくわかるようになってきた。

妻、母、働く女性、とタイトルが多くなるにつれ、女という文字を忘れてしまう。実際、この頃は「女が女装する時代」といわれているらしく、男性と互角に働くうちに、女装しなければ、女らしさが表現できない女性がふえているというのだ。

ファッションも女らしさを強調するような、フリルのついたブラウス、リボンのついたバッグなど、かわいいものが流行している。確かに、衣装によって気分をかえ、本来持っている女らしさを引き出すのはいい方法かもしれないが、なんだかさびしい気もする。

一方で働く女性たちのなかには「女らしく」することへのためらいもある。男性よりも3倍働いて地位を確保してきた女性たちは、甘えたり、涙を流したりせず、女を武器にしないことで、生き延びてきたという自負があるからだ。だから、いざ個に戻って、本来の女らしさを引き出そうとすると照れてしまうというのだ。

 

坂東真理子さんのベストセラー「女性の品格」にも女らしさは品格を成す要素の一つであると書かれているが、自分の中の「女」の扱いは、これがなかなかむずかしい。

さらに追い打ちをかけるのは加齢。年を重ねるうちに恥じらいを失い、女であることを忘れてしまう。その上に日本には年をとっていつまでも「女」の匂いをさせていることを恥とする文化がある。外国の女性たちとは大いに違うその文化の中で育まれた意識が邪魔をするのだ。

「死ぬまで女でいたい」という思いはどの女性も心の奥底に眠らせているだろうが、顕在化するにはかなりの勇気がいる。もっと、自由に心を遊ばせて、「死ぬまで女でいられたら」、それは本当に女冥利につきるだろう。

たおやかさと、優しさと、ほんの少しのかわいい色香と。女として生まれたときに、一緒に持ってきたものを、どの世代の女性たちももう一度取り戻す時代が来ているように思えるがどうだろう。

 

(20080222)

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プロフィール

蟹瀬 令子

かにせ れいこ

上智大学文学部英文学科後、博報堂に入社し、コピーライターやコピーディレクターとして活躍。1999年、「ザ・ボディショップ」を日本で展開するイオンフォレストの代表取締役社長に就任。
ケイ・アソシエイツ代表として、外資系企業、および国内企業のブランディング、マーケティングを手がける。2007年スキンケアブランド、LENAJAPONを立ち上げ現在にいたる。

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